日本を賤しめる「日本嫌い」の日本人―いま恐れるべきはジパノフォビア日本を賤しめる「日本嫌い」の日本人―いま恐れるべきはジパノフォビア
(2009/05)
渡部 昇一

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第五章 ユダヤ人を知らなすぎる日本人、から抜粋

全日空の元社長 若狭得治の甥に当たる若狭和朋という人は、九州大学の法学部時代に国家公務員上級資格と司法試験に受かり、通産省に入り、結婚してからドイツ留学を命じられてドイツへ赴任したところ、日本に残っていた夫人が交通事故でなくなってしまい、世をはかなんで僧侶になりました。その後しばらくしてから、県立高校の教師になり、以後38年間教壇に立ち、その間アメリカのウォルミルトン大学の大学院博士課程で博士号をとり、高校を定年退職後は九州大学の大学院で客員教授を務めた経験もあるという、面白い経歴の人です。その人が書き残しています。

イギリスを自慢しているやつは、イギリス人だ。
ドイツの悪口を言っているやつは、フランス人だ。
スペインの悪口を言っているやつはスペイン人に決まっている。

自国を悪く考えるようになってからのイスパニア大帝国は衰滅にいたりました。誰がスペインを悪く言ったのでしょうか。イギリスやオランダです。この両国はスペインの後輩国です。イギリスやオランダが植民地でいかに悪いことをしたかは、今では広く知られています。殺されたアメリカ原住民やインドネシア人の数を知る人はいません。
 同じことをスペイン人も「やった」だけです。しかし、スペイン人は負けました。悪口合戦に負けたスペインは、歴史の敗北者になり果てました。つまりスペイン人たちは、スペインの歴史に自信が持てなくなっていったのです。悪逆非道の国・虐殺の国・異端虐殺の国・暗黒の帝国、狂信の支配する国・・・・無数の悪口がスペインに浴びせられました。プロパガンダ合戦に敗北したスペイン人は、国民的に元気を失い歴史の敗北者にさせられました。

歴史的事実から言えばイギリスのほうが植民地の住民を殺した数は断然多い。スペインが進出した南米や中南米にはいまでもインディオが大勢残っています。ところがイギリスが出て行った北米ではあれだけ大勢いたインデアンが現在では何百分の一になってしまっている。オーストラリアの南にあるタスマニアなどはイギリス人に皆殺しにされ、原住民は一人もいなくなってしまいました。文字通り原住民狩りが行われていたのです。スペイン人よりはるかにひどいことをやっている。
ところがイギリスの悪口はあまり広がっていない。なぜかというと、スペイン人に対するイギリス人やオランダ人のように、世界中に悪口をばら撒く外国人がいなかったからです。いくら悪いことをしたって、それを吹聴されなければ善人面をしていられます。だからアングロサクソンは「自分が悪うございました」とは絶対に言わない。それどころか自分の国を大いに誇る。

イギリス人が自分の悪行は棚に上げて、スペイン人の悪口を言うようになったのはなぜか。

スペイン人の司教が同胞の悪口を書いた報告書をまとめたからです。分かりやすく言えば、日本人が中国人の尻馬に乗って、ありもしない”南京大虐殺”を「あった」とする本を出版したようなものです。

司教のパルトロメ・デ・ラス・カサスの書いた「インディアスの破壊についての簡潔な報告」
岩波文庫にもありますがこんな調子です。
「彼ら(スペイン)は村々へ押し入り、老いも若きも、身重の女も産後間もない女もことごとく捕らえ腹を引き裂き、ずたずたにした」
「彼らは誰が一太刀で体を真二つに斬れるかとか、誰が一撃のもとに首を切り落とせるかとか・・・賭けをした」
「ようやく足が地に着くぐらいの大きな絞首台を作り・・・・13人ずつその絞首台に吊るし・・・・生きたまま火あぶりにした」

スペインの一司教が言葉の限りを尽くして自国をののしるパンフレットを書いたために、500年経った今でも日本の教科書に喧伝され、さらには残虐場面の銅版画が掲載され続けることになってしまったのです。

「自信を喪失し自己嫌悪に苦しみ、自虐に親しみ、さびしく自国を嘲笑する国民」には「衰滅しか道はありません」と若狭さんが書きのこしています。そんな若狭さんが心配するのは「イスパノフォビア」に勝るとも劣らない「ジパノフォビア」の蔓延です。


章の見出しから分かるように、これには興味深い続きがあります
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2009.08.08 / Top↑
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